宿屋の料金は、貧乏な僕をあざけるかのような価格で、やり場のない憤りを感じるレベルでさ。
宿泊が金貨5枚、食事が金貨4枚だって…
何度も言うけど、僕がこの任務を命じられて最初に持たされたのは金貨20枚だ。
「1日20枚」とかじゃなくてさ、「全行程を通じて20枚」なんだよね。
そして、金貨20枚といえば、僕の年収に近い。
1泊してメシ食うだけで年収の半分近くを払う宿ってなんだよ!
肩に乗ってるオジャマ虫のジャンの分も入ってるってことか?
でもこいつは旅行業協会の回し者だと思うから、客じゃないよね。
GOGOキャンペーンでジャブジャブの協会なのに、現場で働く下っ端には満足に給料も払ってないとか?
それで、ジャンが憑りついた客が払う代金に上乗せして、日当をひねり出してるとか…
ありえるな、腐敗しきったアナランドの産業界なら。
それから、下っ端公務員の僕の給与が低すぎるのも、価格を聞くたびにショックを受ける原因だよね。
普通にGOGOを使える階層の人から見たら、いくらこのビリタンティのクソ高い宿賃も「自分へのご褒美」とかいう謎の言葉でカタが付くんだろう。
ご褒美に金かける余裕がない僕にとって、いちどきにした多額の支出はただの自殺行為にしかならない。
何だか空しくなってきた
そして腹も立ってきた。
今夜は夜行生物に襲われてもいい。野宿だ。
金額を聞いたとたんに踵を返す僕のことを、宿の従業員は蔑んでいるんだろうなという被害妄想とともに、建物を出た。
「チッ!」という音がやけに大きく聞こえてギクッとしたんだけど、それは耳元で舌打ちしたジャンのものだった。
(この野郎)
とは思ったけど、コイツも旅行業協会事務局に体よく使われている駒だと思うので我慢した。
僕が宿屋に泊まって飯を食わなかったから、コイツも今日の日当は出ないようだからね。
贅沢が目的じゃなくて、ただ食い扶持が要るから身を挺して稼ぐ現場員が、その苦労のわりに日の目を見ない状況を、ジャンと共有していることには変わりがない。
僕の魔法を使えなくしている迷惑なやつだけど、そこだけはジャンと分かり合える気がしたんだ。
村の外へ出てすぐの場所に、野宿によさそうなスペースを見つけた。
ジャンと食事を分け合って食べたあと、僕たちは眠った。
村のすぐそばということもあってか、近くに夜行生物も居ないようで、朝までぐっすりだったよ。
(メタ記述)
ステータス
体力13→18(食事で+2、眠って+3)
運勢ポイント8
金貨:10
食料:2→1
持ち物:なまくらの剣、竹笛、ゴブリンの歯12、ジャイアントの歯1、銀の鍵(111)、金貨10枚分の宝石1、にかわ入り薬瓶、鼻栓、玉石4、スカルキャップ
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