とにかくガチの戦闘は避けたい。
できれば1回も経験せず、この任務を終えたかった。
ジャンの魔法防護壁さえなければ、こんな刺客の一人や二人、呪文でカタを付けられたのに…
嫌々臨んだ純粋な剣技でのバトルだったけど、意外に好成績だった気がするね。
2回ほど攻撃を喰らったけど、今、刺客は僕の前にひざまずいて許しを乞うている。
(メタ記述)ともに2回ずつ傷を負わせた状態
刺客:技量ポイント8 体力ポイント6→2
主人公:技量8(+1広刃の剣) 体力ポイント18→14
刺客はフランカーと名乗った。職業は刺客、盗賊だそうだ。
旅人を相手に格闘の練習をしていて、僕などは軽く一ひねりできると思っていたらしい。
コイツもカーレを目指しているということで、命を許してもらったかわりに、僕に味方すると約束してくれた。
ただ、ここでいったん別れるという。
僕は了承した。
本当は、魔法が使えない今、剣での戦いを強いられるこの状況で、フランカーが同行してくれたら、どれだけありがたいことか…
でも、こういうシチュエーションが頭をよぎったんだ。
仕事帰りの職場で、下りエレベーターを待ってたら、向こうから仲が良いわけでもない同僚が歩いてきた。
朝の出勤時ならともかく、帰るときは一緒に乗りたくない。
だって、その流れで駅まで一緒に歩く羽目になるじゃない?
それに、同じ方向だったら電車の中でも一緒でさ。
だからって、1Fまで降りて扉が開いてさ、同じ方向に行くのがわかってるのに「じゃ、おつかれさまです」って距離を取るのは精神的負担があるからね。
僕は苦手なんだ、そういうの。
だから、知り合ったばかりの刺客と、仲良く同行はできないよ。
なんたって、狙われたのは僕だからね。
どんな会話していいかわからないし。
たとえばフランカーと齢が一緒だっていう共通点を見つけたとしても、それだけでカーレまで話を引っ張れないしね。
しかも、カーレに着いたとするじゃない?
もしフランカーに友人でもいれば、それをきっかけに別れられる。
でも3人で同行する羽目になって、3人とも黙っちゃったらさ…
マンパンの大魔王と戦う前に、人間関係のプレッシャーで僕は倒れるだろう。
フランカーがボッチ型の性格で助かったよ。
ま、これは全部、ジャンがいなくなる前提で考えてることだけど。
ジャンと一緒にフランカーを見送りながら、僕は頭の中でジャンを切り捨てる方法を巡らせていた。
でもその前にコイツのカツラ疑惑を解明したい。