【公的勇者】ソーサリー主人公が高卒公務員だった場合

スティーブジャクソンの傑作「ソーサリー」のプレイ小説。 愚痴と不満が渦巻くニヒリズムファンタジー

2020年12月

アリアンナの家から脱出した僕は、さっきの道まで引き返してきて、今度はきっちりダンパスの方向へ歩き始めた。

午後の残された時間いっぱい北へ向かってひたすら歩くと、丘のてっぺんに出た。

今度はそこから下って、川沿いにある小さな村を目指す。

あれがダンパスだ。

 

村を示す標識を過ぎ、僕はホッと一息ついた。

アリアンナの家に寄り道しながらも、なんとか今日のうちにダンパスに入れたからね。

予想よりも到着が早くて、まだ夕暮れ前だ。

宿屋を探す前に、少し村の中を歩いてみるか。

クリスタタンティの時みたいに、何か役に立つものをくれる村人がいたら接触しておきたい。

 

村の真ん中の道を歩いていくと、数人の村人が座り込んで何かを食べていた。

(ボンバか? それなら是非ご一緒に

クリスタタンティでかなり回復したけど、それでも十分とは言えないくらい、疲労とダメージは大きい。

機会があれば、こまめに回復を図っておくべきだと思うんだ。

 

村人の輪からソーシャルディスタンスを保って自己紹介すると、彼らは話をやめてこっちを見た。

そして手招きしてくれる。

やったぜ!

 

追剥にあったカントパーニ。僕を見るなり襲い掛かってきたシャンカー鉱山のゴブリンたち。あからさまなよそ者扱い(当初は)をされたクリスタタンティ…。

この旅に出て以来、集団との関わり合いでは何度も煮え湯を飲んできた。

嫌な記憶が脳裏によみがえって逃げ腰だった僕に、ダンパスの住民は新たな記憶を植え付けてくれそうだ。

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嬉々として歩み寄る僕だったが、村人たちは途中から僕の剣を見て顔色を変えた。

(なんだ?)

 

どうやら非戦論者たちらしく、武器を恐れているようだ。

剣をこの場に置いていかないと、彼らが僕を受け入れることはないと見た。

でもさすがに、剣を手の届かないところへ置き去りにするのは抵抗がある。

罠かもしれないしね。

 

今僕が背中に吊っている剣は、大枚はたいて買った高品質な剣だからな。

背負い袋に入れてある、アナランドから持ってきたナマクラ剣だったら、よしんば盗られてもOKなんだけどね。

剣を失くすリスクを冒してまで、よそ者の群れに混ざる気はないよ。

ま、この状況ではむしろ僕のほうがよそ者なんだけどさ。

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もったいないけど、ここは仕方ない。

やっぱり相性悪いんだ、集団とは、さ。

僕は村人たちの手招きに応じるのをやめて、先を急ぐことにした。

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いや、別に振り切って出て行ってもよかったんだけど、要は「デュエル!」ってことでしょ?

あれ言われると強制戦闘に入らざるを得ないからね。

 

振り返ると彼女は、椅子に向かって何かの呪文を唱えている。

やはり魔法使いだったか。

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椅子はきいきいと音を立て始めたかと思うと、僕の目の前で荒々しく蠢き、やがてそれは1体のウッドゴーレムに変身した。

 

(発動に時間かけすぎだよ、アリアンナ)

椅子に呪文をかけてからウッドゴーレム登場まで相当待ったぞ。

その間に、僕が君に何度ダイレクトアタックをかけられたと思う?

どうやら君は、デュエル形式のバトルに慣れきっているようだね。

本当の戦いだったら、敵はこんなに待ってはくれないよ。

 

そうか!ようやくわかったぞ!

アリアンナの家は、デュエル会場だ!

美女の手料理を味わった後、デュエルして盛り上がって、帰りにチェキ撮って楽しむ場所だったのか。

会いに行けるアイドル・デュエリスト(家庭的💖ってか?

 

手作り料理とデュエルとチェキ…

ファンなら大金出すよな…

やるな。アリアンナ。

だが僕は、お金持ちのアリラーおじさんとはワケが違う。

残念ながら君の必勝パターンには乗ってあげられない貧乏人でね。

 

(メタ記述)

ウッドゴーレム:技量8 体力8

 

型どおりのデュエルはしないよ。

空気は読まないタチでね。

 

「JIG」

竹笛を取り出して吹くと、ゴーレムの動きが止まり、唖然とした。

制御不能な自分の手足に呆然としながら、不格好に踊り始める。

僕は笛を吹きつつ後ずさりして小屋を出た。

アリアンナは追ってこない。

完全な使役系魔法使いで、自分では戦わないタイプなのかな?

 

あるいは、実はカメラが仕掛けてあったとか…

「ほうびはあげません」とかいって、動画は上げてたんじゃないのか?

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さっきの一連のくだりを、生配信でさ。

アリちゃん脱出成功or失敗と、ウッドゴーレムガチバトル勝敗予想で一儲けしようって…

おまけに、アリラーたちがスパチャにガンガン入れてた可能性も疑えない。

 

(やられた)

どうやら僕は、アリアンナによって、まんまと金儲けのダシにされたらしい。

それでもゴーレムとのバトルのほうはうやむやにしてやったけど、脱出イベは成功しちゃったもんだから、賭けが成立しちゃったよ。

 

それに、スパチャは防げない。どっかにカメラあったんだろうね。

さすがにそれには気づけなかったよ。

まあ、もし気づいて映像は隠せても、マイクが声を拾ったら音声だけが配信されて、アリラーたちの妄想が膨らむだけだからね。

「アリー!だいじょぶ!?」「アリたん逃げて!ヘンタイ野郎から!」とか、逆にスパチャの金額はアゲアゲになりそうだからね。

 

(メタ記述)

ステータス

主人公:技量8(+1広刃の剣) 体力12→11(JIG詠唱) 運勢ポイント8

金貨:4→11

食料:3

持ち物:なまくらの剣、竹笛、ゴブリンの歯12、ジャイアントの歯1、デス・ハウンドの歯、スナッタキャットの歯、サルの歯、銀の鍵(111)、金貨10枚分の宝石1、にかわ入り薬瓶、鼻栓、玉石4

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箱の中身はなんだろな?

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宝箱を開ける瞬間のワクワクドキドキ感はたまらないね。

しかも、アリアンナは魔法の道具を3つもくれる。

内容にもよるけど、市価で金貨10枚程度はくだらないんじゃないかな?

 

開いてみるとそこに入っていたのは、

・にかわの入った小さな薬瓶

・二股に分かれた奇妙な鼻栓

・玉石4個

 

(う~ん…)

 

僕が欲しいのは、自分の攻撃強化か、相手からの攻撃回避に役立つ魔法呪文の道具なんだよね。

まあ、この道具ならトラップ設置とか逃亡とか、あとは目くらましなんかに使えそうだから、中らずといえど遠からずって感じかな。

ただ、売りものだったらまず買わないっていうくらいの微妙なラインナップだ。

 

アリアンナ。

たぶん僕たち、付き合ったら色んなとこでズレが生じそうだね。

たぶんムリ(←何様だ僕は?)

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でも美人だからなぁ…

でも美人は3日で飽きるっていうし…

 

彼女はさらに、食器棚の引き出しのひとつから袋を取り出して中身を見せた。

そこには金貨が7枚

これも僕にくれるという。

アリアンナァァアアア!

好きだ! 付き合ってくれぇ!(←最低なヤツ)

 

もうこのままアリアンナのイヌになろうかと思案する僕を見て、彼女はくすくすと笑っている。

さすがに本心を見抜かれたかとハッと後悔し、僕は脱出イベント楽しかったよと礼を言って、恥ずかしい姿を早々に彼女の前から消そうと、戸口へと向かった。

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「このアリアンナは、戦いもせずにほうびの品をあげたりしませんわ!」

僕の肩に手を置いて引き止めたアリアンナは、まるで宣言するかのように高らかに言い放った。

 

ちょっと……どういうこと?

イベントは終了したはずだけど、あれは第1ステージで、ここからがとうとうクイズ王対決?

負けたら今の賞品と賞金は没収とかさ。

 

なら最初から言えよ!

ゲームもののマンガってさ、主人公がバトルのルールを知らされなさすぎで、敵が完全に「言ったもの勝ち」形式で進むけど、あれはマンガ、これは現実だよ!

アリアンナがスタッフのエルヴィンを使って仕組んだこの脱出イベントには、やはり賞品が用意されていた

やったぜ! 狙いどおりだ。

しかも、魔法使い用と戦士用の2タイプが用意されてるなんて、やるじゃん。

 

「わたくしはこの森で、魔法に必要なさまざまな品を集めてきました。この檻から出していただけたら役に立つ品を三つ、あなたさまにさしあげましょう」

 

3個も!!

もちろん、僕が欲しいものと全く違ったら意味ないんだけど、カントパーニの村で魔法の道具を2つ買っただけで金貨7枚が吹っ飛んだことを考えたら、タダで3つもらえるなんて、どう考えても破格だ。

 

まてよ…

この脱出ゲームイベントの参加費について、まだ説明を聞いてないのが気になるな。

いざ賞品もらって小屋を出ようとしたら、イカツいエルヴィンが3、4人出てきてさ

「とりあえずお客さん、そこのイス座ってくれていいからっ」

なんて、出入口を塞ぎながら凄んできて

 

「座ってくれていいから」ってのは、一瞬こちらに決定権がある言い方に思えるんだけど、事実上の強制でさ

それで恐る恐るついたテーブルには、簡単なかわきものが乗っただけの皿が1枚、ガンと置かれて…

あげく、それだけでひと月の給料分くらいの金額を請求されたりしないよな。

 

アリアンナが美女だからって、へたに感情移入すると、そういう時に断固戦う精神が萎えそうだし、そもそもそれ狙いゆえの美人だったりもするからね。

興ざめして悪いけど、ここは淡々と進めさせてもらうよ。

 

「DOP」

シャンカー鉱山でオーガの部屋へ侵入するときに使った、扉開けの呪文だ。

錠前はカチャカチャと音を立て、やがてバラバラになって床に落ちた。

眉一つ動かさずに、あっさりと課題はクリアしたぜ、アリアンナ。

 

彼女は感謝の言葉とともに檻から這い出してきた。

いや、もうわかったからその設定。

それより賞品をくれ、賞品を。

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アリアンナは手にした小箱を僕に手渡した


ふつう、イベント勝者への贈呈は、司会者とは別に若い美女が担当したりするけど、ここでは主催・兼司会者のアリアンナ自身が若い美女だけに、贈呈の美女役も兼ねてるんだな。

人件費がかなり抑えられるはずだよ。

 

やはり美人は得だ。

ま、その分用心棒を雇ったりしなくちゃならないだろうけど、上手くやればその用心棒の代金すら、男たちの手弁当で済ませられるかもしれないな。

僕はアリアンナの逞しい商魂に若干のリスペクトを感じつつ、もらった小箱を開けてみた。

 

(メタ記述)

ステータス

主人公:技量8(+1広刃の剣) 体力14→12 運勢ポイント8

金貨:4

食料:3

持ち物:なまくらの剣、竹笛、ゴブリンの歯12、ジャイアントの歯1、デス・ハウンドの歯、スナッタキャットの歯、サルの歯、銀の鍵(111)、金貨10枚分の宝石1

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アリアンナが泣いているのか?

僕は見上げるほどの上背を持つ食器戸棚を回り込んで、鳴き声のする方へ向かった。

 

なぜかそこには大きな檻が置かれていて、中には若い女が閉じ込められている。

よく見るとかなりの美人…いや、飛び切りの美女だ。

これがアリアンナなのか?

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クリスタタンティの居酒屋で会ったしわしわの老人が、あの年でわざわざこんな遠くまで足繁くやってくる理由がわかった気がしたよ。

通っちゃうね、これなら。

おそらく、近隣のダンパス住民はもちろん、クリスタタンティをはじめ、遠路はるばる旅行してまでアリアンナに会いにくる男どもは、後を絶たないことだろう。

 

この部屋にある棚のどこかには、絶対にチェキが置いてある

1枚当たり相当なプレミアムを含んだアリアンナ価格が提示されているに違いない。

 

どんなサービスが主体なのかはまだ分からないが、客単価は相当高めなんじゃないかな?

おまけにここは本道から随分離れていて、家賃相場だって大分安いだろう。

間接費用を抑えつつ、十分な粗利を取れていることだろうね。

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やるな。アリアンナ。

やっぱり、美人は得だね。

 

…で、それはさておき、檻の中でアリアンナは何をしてるんだ?


まさか僕の来訪を察知して脱出ゲームイベントか?

クリスタタンティの老人が、前夜のうちに飛脚を飛ばして自分が口コミしたことを知らせ、目論みどおり僕が来店したらポイントゲットで次回来店時チェキ無料、とかいう仕掛けに乗っちゃったかなコレ?

 

バカを言っちゃいけない。

僕はお金ないんだ。

参加費がバカ高いならこのまま店を出るよ。

 

色々考えて出方をうかがう僕に、アリアンナは泣きながら嘆願する。

「旅のお方、どうかわたくしを檻から出してください!」

 

…ていう設定かな?

 

「あのいたずら好きなエルヴィンたちに、もう二日もここに閉じ込められたままなのです!」

そういうプレイを楽しんでるとかじゃなくて?

 

「どうかお助けくださいまし」

ましまし。


もしキミが二郎系でそれ言ったら「助けマシマシ入りましたぁ!」て、勢いの良い男子たちが、それはもう持て余すほど助けてくれると思うよ。

 

まあいいか。これなら頭を使うまでもなく、呪文を使えばこの程度の檻の鍵なんて簡単に開く

僕はアリアンナとムフフしてお金を使うためにここへ来たわけじゃなく、クイズ対決で物資をゲットすることを目的にしてたんだ。

とりあえず、このイベント達成の賞品が何かを知りたい。

 

「あなたさまがご無事で旅をお続けになれるよう、わたくしが力をお貸しもうしあげます。あなたさまの武器は魔法でしょうか、それとも武術でしょうか?」

ktkr(2回目)

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