僕は用心しながら鉱山へ近づき、木の陰に隠れながら前方の空き地をそっとうかがった。
かなりの数のゴブリンたちが集まっていて、キラキラ輝く岩とか、金塊っぽいかたまりが詰まった入れ物を抱え、洞窟を出たり入ったりしてる。
あの中を抜けていかないと、屋内施設に入れないんだ。
普段は洞窟を横目に見つつ通り過ぎているけど、いつもこの洞窟の中が気になってた。
だって、中にどんな自動販売機があるかとか、食堂はどんな感じなのかとか、気にならない?
こういう労働現場って、それぞれ独特の雰囲気や味わいがあってさ、僕も味わってみたかったんだよね。
その秘密のベールを、とうとう今日は剥がして見ることができる。
さすがにゴブリンに混じって社食のテーブルを囲むわけにはいかないから、食事はできないけどね・・・。
ウキウキして便意をもよおした僕は、ついでだからトイレにも入っておきたくて、ゴブリンたちの動きが途切れた一瞬のスキに、洞窟からそっと内部へ忍び込んだ。
薄暗い坑道の中は、あまり遠くまで見通しが利かないけど、逆に言えば、遠くからなら僕の姿もはっきりとは見えない。
誰かに姿を見られた時の用心に、シルエットだけでもゴブリンに寄せておこうと、僕は少し猫背になってアゴを突き出し、肩を広げて両腕を身体から離すように垂らし、少しガニ股に歩くようにした。
でも、基本的に手ぶらで歩いているゴブリンは見なかったので、僕は背負い袋をお腹側に回して抱えることにした。
注意深く歩を進めていくと、坑道が二股に分かれる場所へ来た。
右か? それとも左か?
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