目的のアリアンナが、この先にいる!

僕はほとんど走るような速さで森の中を進んだ。

まだ陽が高い。たぶん正午前後だろう。

アリアンナへ寄って、暗くなる前にダンパスへ入って、宿屋でゆっくりしたい。

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今の手持ち金貨は4枚しかないから、果たしてダンパスで宿屋代が払えるかどうかは怪しい。

けど、アリアンナとのクイズ対決の賞金を横持ちして払えるかもしれないぞ。

ひょっとして、クイズ対決でダンパス宿泊券とかもらえるかもな…

もはや、アリアンナとの遭遇は、クイズ対決しか考えられなくなっている僕は、根拠のない確信のまま森をゆく。

 

やがて、もう1本の道と交差する地点に出た。

僕はさっきの標識の案内で、針路を北に変えて進んできたけど、この標識にはもっと丁寧に行く先が表示されている。

 

<西に向かえばアリアンナ。まっすぐ進めばダンパス>

これで“距離”が書いてあれば完璧なのにな…

今度は左折して西を目指すぜ。

 

任務上は、地図の左下から右上に進まなければならないので、ここで左折してあまり深入りすると、出張の復命のときに面倒なんだけど、目的がそこにあるとわかったからには気も楽だ。

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さいわい、標識から少し下ったところで、それらしき小屋を発見した。

まるで一枚の絵画のように、木々を背景にくっきりと浮き出たような佇まいだ。

花々が外壁を彩ってて、扉には華やかな模様が描かれてる。

一般家庭でこれだけのウェルカム感を出すことは、ちょっと考えづらい。

これは間違いなくアリアンナの店(家?)なはずだ。

 

小屋に近づいて扉を叩いてみたけど、返事が無い。

留守なのか?

時間が時間だけに、ちょうど昼休みなのかもね。

中に入ってみれば、受付にプレートかなんかで午後の開始時間が書いてあるんじゃないかな。

よし、入ってみよう。

 

扉を開けて小屋の中をのぞくと、内部はきちんと片付いていた。

全く予想してなかったけど、もしかしてここの住人は女?

ボタン早押しの、Tシャツ着た太っちょの男をイメージしてたよ。

黒ブチ眼鏡で白いハチマキ締めた感じのさ。

何かそういうの多そうじゃない? クイズ王って。偏見?

 

部屋の中央にはテーブルを囲んで椅子が置かれ、隅のほうにはマットレスが…

ボードゲームで熱くなって、寝落ち寸前でバタンと雑魚寝する感じなんだけど、女となるとちょっと違うかもな。

どっちにしても僕が期待していたクイズ対決っぽくない様子だ。

 

クリスタタンティの老人は「アリアンナが家にいたら頭を使わにゃならん」と言っていたけど、別にアリアンナがいなくたって今の僕は、この現実否定のために精いっぱい頭を使ってる。

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台所がやたら広くってさ、かなりの料理好きか、料理教室を開いているか、もしくは料理バトル?

アリアンナがクイズ王で、クイズ対決を仕掛けてくるっていう僕の妄想は、もう白旗を上げ始めていた。

 

そのとき

大きな食器戸棚の向こうから、女の鳴き声が聞こえてきたんだ。

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