アリアンナの家から脱出した僕は、さっきの道まで引き返してきて、今度はきっちりダンパスの方向へ歩き始めた。

午後の残された時間いっぱい北へ向かってひたすら歩くと、丘のてっぺんに出た。

今度はそこから下って、川沿いにある小さな村を目指す。

あれがダンパスだ。

 

村を示す標識を過ぎ、僕はホッと一息ついた。

アリアンナの家に寄り道しながらも、なんとか今日のうちにダンパスに入れたからね。

予想よりも到着が早くて、まだ夕暮れ前だ。

宿屋を探す前に、少し村の中を歩いてみるか。

クリスタタンティの時みたいに、何か役に立つものをくれる村人がいたら接触しておきたい。

 

村の真ん中の道を歩いていくと、数人の村人が座り込んで何かを食べていた。

(ボンバか? それなら是非ご一緒に

クリスタタンティでかなり回復したけど、それでも十分とは言えないくらい、疲労とダメージは大きい。

機会があれば、こまめに回復を図っておくべきだと思うんだ。

 

村人の輪からソーシャルディスタンスを保って自己紹介すると、彼らは話をやめてこっちを見た。

そして手招きしてくれる。

やったぜ!

 

追剥にあったカントパーニ。僕を見るなり襲い掛かってきたシャンカー鉱山のゴブリンたち。あからさまなよそ者扱い(当初は)をされたクリスタタンティ…。

この旅に出て以来、集団との関わり合いでは何度も煮え湯を飲んできた。

嫌な記憶が脳裏によみがえって逃げ腰だった僕に、ダンパスの住民は新たな記憶を植え付けてくれそうだ。

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嬉々として歩み寄る僕だったが、村人たちは途中から僕の剣を見て顔色を変えた。

(なんだ?)

 

どうやら非戦論者たちらしく、武器を恐れているようだ。

剣をこの場に置いていかないと、彼らが僕を受け入れることはないと見た。

でもさすがに、剣を手の届かないところへ置き去りにするのは抵抗がある。

罠かもしれないしね。

 

今僕が背中に吊っている剣は、大枚はたいて買った高品質な剣だからな。

背負い袋に入れてある、アナランドから持ってきたナマクラ剣だったら、よしんば盗られてもOKなんだけどね。

剣を失くすリスクを冒してまで、よそ者の群れに混ざる気はないよ。

ま、この状況ではむしろ僕のほうがよそ者なんだけどさ。

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もったいないけど、ここは仕方ない。

やっぱり相性悪いんだ、集団とは、さ。

僕は村人たちの手招きに応じるのをやめて、先を急ぐことにした。

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