カントパーニの出口近くまでたどり着いた。
もはやこの辺は中心地から離れていて、小さな小屋が点々と並ぶだけのうすら寂しい場所だ。
その間を抜けていくうちに、妙な違和感をおぼえたんだ。
戸口の陰からこちらをうかがう顔が、目を向けるとサッと引っ込んだ。
明らかに彼らのターゲットは僕だけど、これがマンパンやフェンフリーの工作員だとしたら、何ともマヌケだ。
こんなにあっさりと気づかれるようでは、とてもプロとは言えないよね。
(ひょっとしてこの村は、工作員に占拠されてるわけじゃないのか?)
そんな気もしてくるけど、どっちにせよこのまま村の中心に戻っていいのかという疑念が湧いてくるね。
明らかに怪しすぎるだろ。
この村からは、暗くなる前にできるだけ離れておいたほうがいいかもしれないな。
この様子じゃ、仮に食料を買ったとて、中に睡眠薬とか入ってるかもしれないし。
再び村の中心地へ向かう僕の様子は、既に知られているとみた。
僕が食料を欲しがっていることは、さっきの商人が知っている。
何か仕込んでおいて、何食わぬ顔で売りつける可能性があるな。
僕は思い直し、Uターンして村を出ることにした。
もうすぐそこが村はずれだ。あの大岩の前を通り過ぎたら、村人たちの視線ももう届かない。
その瞬間、まさにその大岩の陰から二人の村人が剣を構えて襲い掛かってきた。
やつらは僕に背負い袋をよこせと脅してくる。
今までこの村では大きな買い物などしたことがなかったけど、今回は一気に僕の年収ぐらいの現金を支払ったからね。
『大金を持った旅人』って認識されたんだろうね。
単なる盗っ人が現われたということは、カントパーニはまだ、フェンフリー同盟の前哨基地になってるわけじゃなさそうだ。
僕の邪魔をして、彼らに利があるとは思えないからね。
ただ、どうやら村全体がグルになってる感はあるね。
村営の盗賊とでもいうべきか。
アナランド発祥の治安悪化の影響を、一番受けやすいのはこの村かもしれないからね。
それはともかく、まずはこの状況をどうにかしなくちゃね。
もちろん、言うことを聞いて背負い袋を渡す気などない。
脅しをはねつけると、連中は両手で剣を構えて突進してきた。
二人を相手に剣で戦うのは不利だ。