【公的勇者】ソーサリー主人公が高卒公務員だった場合

スティーブジャクソンの傑作「ソーサリー」のプレイ小説。 愚痴と不満が渦巻くニヒリズムファンタジー

カテゴリ: 4日目(5月29日)

ダンパス村の出口は、いきなり二股に分かれている。

1本は曲がりくねりつつの登り。

もう1本は森へ続く下り。

 

もうわかってるよね? 僕の考え。

シャムタンティの標高はシャンカー鉱山でピークを迎えた。

もう登る方向へ行く気はない。森へ下るよ。

 

ほぼ午前中いっぱいかけて、丘の斜面をめぐる。

曲がりくねる道の途中で食事を摂った。これで手持ちの食料はあと2食分だ。

 

(メタ記述)

体力ポイント:13→15
食料:3→2

 

もうすぐ正午になるころ、もう一度道が二股になった。

一方は丘を下るんだけど、浅い谷間に下りた後すぐに次の丘を登ることになる。

もう一方は、こっちの丘と次の丘の間に渡された、木の吊り橋へ続いている。

 

どう考えても、わざわざ下って登り直すよりも、橋を渡ったほうが早い。

吊り橋ってのがちょっと危険な気もするけど、僕ら魔法使いは落下の時に役立つ呪文も知ってるし、できれば暗くなる前に集落を見つけておきたいんだよね。

ってことで、ここは吊り橋のほうを選ぼう。

 

橋のそばまで行くと、そこには小さな小屋があった。

さっきの場所からだと樹の陰になって見えなかったけど、人が居たんだね。

近づくと中から老人が現われて、僕と橋の間に立ちふさがった。

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雰囲気から察するに「ここは通さないぞ」ってとこか…

まさか、ここでバトルしなければならないのか?

 

立ち止まって様子をうかがう僕に、老人はしわがれ声でこう告げる。

「見知らぬ者よまちなされ。

ここを通って行きたくば、ヴァンカスさまのふたつの問いに、ちゃんと答えてもらおうか」

 

まさかの謎解きバトル?

アリアンナをクイズ王だと思い込み、クイズバトルを想定して肩透かしを食ったけど、まさかここでクイズ対決になるとは…

しかも対戦相手は美女じゃなく、こんな爺さん…

 

(戦わないでもいいじゃん。飛び越えていけるしさ)

一般的に非力な魔法使いでも、この老人なら力づくでゴリ押しできそうだよ。むろん僕だってさ。


(でも)

この老人自身が魔法使いってこともある。

それもかなりの魔力を持った…

(あり得るな)

よそ者ってだけで問答無用に道を阻むってことは、かなりの力量とみた。

ここは相手の言葉どおり、受けて立った方がよさそうだ。クイズバトルを。

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若き美女アリアンナとしたかったクイズバトルを、まさかこんな老人とすることになるなんて、思いもしなかった。

ああ、アリアンナ(右のほうね)。
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君とはたぶん性格は合わないと思うけど、手料理を食べさせてほしい。

そしてその後デュエルして、最後に一緒にチェキ撮らせてほしい…

貧乏公務員の僕も、いつかはその悦楽に浸ることができるだろうか?

 

イカ~ン!

僕までアリラーおじさんたちの仲間になりかけてる。

だいたい、僕にはアリアンナと楽しむ財力なんてない。

冠を取り戻したら、特殊勤務手当の支給を交渉しようかな?

ムリだろうな、あいつが居るかぎり。
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でも何かの形で金一封くらいくれないと割に合わないよ。

そしたらもう一度アリアンナと…

 

「クックック」という老人の笑いによって、僕は現実に引き戻された。

鼻の穴が膨らんだところを見られたらしい。
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お、オンナのことなんて考えてないんだからねっ!

「第1問じゃ」

小馬鹿にしたように老人は言い、問題文を口にした。

 

「とらわれの魔女、住んでいるのは森のなか」

ギクッ!

「悪知恵働くこの女」

まさかまさか、見てたんじゃないか?

昨日の、僕とアリアンナのアレを…

動画か? あの配信見てたのかコイツ…

ひょっとしてこの爺さんもアリラーでは…?

あり得る。

 

クリスタタンティで会ったあの老人も、ほぼ間違いなくアリラーだったしね。

中高年男の粘っこい妄執を惹きつける妙齢の美女の魔力に、この爺さんも取り込まれているに違いないんだ。

で、何を聞く気だ? ってか脅しか?

 

でも僕は檻に閉じ込められた彼女を呪文で助け出して、賞品と賞金もらった後はウッドゴーレムをけしかけられて退散しただけで、特にイケないこととか何もしてないぞ。

何を言わされたって大丈夫なはずだ。

 

なのに何だ? なんだ? …何だこの精神攻撃は?

額にじっとりとした汗が噴き出す。

やましいことは何もしてない。

たしかに妄想はしたケド。

でもそれくらいいいじゃないか!

 Mino-dame

(アンサイクロペディアより)

老人は僕の目をじっと見つめたまま動かない。

「ファイナルアンサー」か?

それ言う気か?

ってかモンタ…いやアンタ、まだ質問してないじゃん?

 

「もしも…」

ハイ…

「もしも存じているならば、まずは答えてもらおうか」

なに? ナニ? 知らないってそんな…僕ノゾキとかしてないし!

何か知ってるって決めつけてるならやめて。僕ホントそんなんじゃないし!

 

「女はなんと呼ばれているか、女の名前は何なのか?」

 

アリアンナっスひょうしぬけ)

 

「ファイナルアンサー?」

イヤわかるでしょ?

老人はジッと僕の目を見つめて動かない。
(出典:https://minkara.carview.co.jp/userid/1321471/blog/43919850/)
mino

なんとなく半笑いなのがムカつくんだよな。

標識に出すほど有名なんだから、そのくらいわかるっしょ!

ムダに間、取るのやめて、そういうのホント意味ないから、ね。頼むよホント。わかった?

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「正解!」

当たり前だ、そのくらい。

だいたい、1問目でそんな引っ張るなよ!

 

「ではふたつ目の質問じゃ」

小手調べは終わった。次がラスト問題だ。どんな難問が来るか?

1問目の回答で、アリアンナの名を声に出して言ってみたことにちょっとドキドキが残る僕は(ピュアか!)、老人の目をにらむように見据えた。

 

「これまで通った三つの村を、順にあげてもらおうか?」

ヘッ!?

そんな簡単なワケないよな?

アナランド方面からここへやって来る旅人の一般的なルートなら、僕が辿ってきたとおりで、カントパーニ、クリスタタンティ、ダンパスだけどさ。

 

「そのとおり」

当たりかよ!

ラスト問題がそんな簡単でいいのか!?

モンタ…じゃなかったアンタは、それで納得なのか?

 Mino-dame

それから、正解のときに使うフレーズが絶対に違う気がするぞ!

なんかわからんがその言い方だと、問題は25個くらいないと、なんかしっくりこない!

 

(メタ記述)

私の見ている創元推理文庫の「魔法使いの丘」では、実際にこの部分では「そのとおり」と記されています。

児玉さん?

 

まあいいか。

老人は脇へよけて僕を通してくれた。

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吊り橋を渡る最中、老人は僕の旅の無事を祈り、その後ある言葉を叫んだ。

「洞窟の鬼神の迷宮にご用心。

危険な罠の数々は、あたかもメデューサの目のごとし」

 

何処のことだ? シャンカー鉱山の坑内のことか?

たしかにあそこには罠が存在した。

 

「左にあらざる通路をば、選びし不運な旅人を、いまかいまかと待ち受ける」

ちがうな。シャンカーじゃない。

シャンカー鉱山の分かれ道で、罠があったのは左だった。「左に非ざる通路」には作業中のオーガがいただけだ。

 

まあとにかく、今後洞窟が出てきた時は、迷ったら右へ行ってはいけないと…

クラピカ理論に毒されたアナランド人がそこへ行ったら、皆殺しに合いそうな場所だね。

本庁の会計担当者に、是非ともそこへの旅行を勧めたいな、絶対に(フフフ…)

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丘を少し下ったところで一休みしたことで、僕の運命は変わった。

 

大きな丸い石に腰かけて、この先の道を見やった僕は、下方に開ける視線の先に、少し大きめの村があるのを見つけてホッとしたため、夕刻間近だってのにしばらくボンヤリしてしまったんだ。

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太陽が急速に傾き出したので、僕はあわてて立ち上がった。

歩き出した僕の耳に、陽気で甲高い声がした。

声のほうに目を向けると、僕の肩のあたりを、親指くらいの小さな生き物が飛び回っている

顔は人間の子供のようだけど、肌の色は緑でやせこけていて、透きとおった羽根を動かして鮮やかに飛んでいる。

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「ミニマイトに会ったら走れ」

かつて環境庁に出入りしているエルフの商人が、そんなことを言っていた。

ちょうど僕が、今回の任務担当者に決まった発表の直後くらいだったかな。

 

「あんた、魔法使いだろ? …なら、ミニマイトに出会ってしまったら、とにかく走るんだ」

「?」

謎めいた言葉を残して、そのエルフは去って行ったんだけど、その時は適当に聞き流しちゃったんだよね。

だって、検収でそのエルフが納品ミスをやったときだったから、話そらして誤魔化してるだけだと思ったんだ。

 

ミニマイトっていうのは、かなり昔からいる老舗の種族でさ。

その割に謎が多くて、僕もそのときのエルフ商人の言葉が気になって、あとで調べてみたんだけど、文献によってずいぶん情報が違っていてね。

 

特に、魔法に関係する情報を念入りに見ていったんだけど、これが完全に真っ二つなんだ。

「ミニマイトは防御魔法が強い」

って書いてる記録と

「ミニマイトは魔法防御が強い」

っていう記録が、大体半々ぐらいに存在しててさ。

 

これって、意味が全然違うんだよね。

“防御魔法”は、普通の肉体戦闘のときにダメージを受けにくくなる魔法のことで、要は物理防御強化のことなんだ。

 

だけど“魔法防御”ってのは、魔法に対する耐性を意味している。

 

たとえばさ

メチャメチャ強烈な防御魔法でカッチカチの体になって、「剣でも矢でも跳ね返すぞコラァ!」ってドヤ顔の戦士がいたとするじゃない?
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でも、敵側にも魔法使いがいて「フンッ」って鼻で笑って雷系や炎系の攻撃呪文を繰り出して来たら、ドヤ顔戦士のアドバンテージは何の効果も持たないんだ。

魔法攻撃は、物理攻撃とは異質の力が加わるからね。

 

逆に、魔法防御力に自信満々の魔法使いが、ドヤ顔で「魔法打ってこいやコラァ!」って万能呪文を唱えるとするでしょ。
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たしかにその状態なら、魔法で攻撃されても利かないと思うけどさ。
ても、普通の戦士に物理攻撃を仕掛けられたら防御効果はゼロなんだ。

 

“防御魔法”と“魔法防御”は、言葉は似てるけど、意味がぜんぜん違う。

ミニマイトは、どっちなんだ?

それに「会ったら走れ」というエルフのアドバイスは何だ?

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もしもだよ

ミニマイトの“防御魔法”が強いなら、むしろ僕に同行して、戦闘のときにかけてほしい。

そうじゃなく、強いのが“魔法防御”のほうならば、相手の攻撃魔法を無効にしてくれたら助かるんだけど。

 

「走れ」っていうエルフの言葉は「怖いものなしになるから、なんでも思い切りやれ」の意味?

なんか不穏な感じだけど、今の僕には願ってもない話だ。

 

ミニマイトは自由で気まぐれな性格だっていう記録も、あちこちの文献に散見されたから、気が変わって僕から離れていく前に、一気に大魔王の元まで、それこそ駆け抜けたほうがいいかもしれない!

そう考えて、一瞬僕の気持ちは沸き立った。

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「待てよ」

もしミニマイトが強力な魔法防御力を持っているとしてさ

“相手が使う魔法を無効にする”っていうときの“相手”ってさ、要するに、「その場にいるメンバーの中のミニマイト以外のヤツ」ってこと?

つまり、僕が使う魔法も無効になるのかな?

 

背筋を悪寒が走った。

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(試してみるべきだな)

ミニマイトと魔法使いの関係性についてを

 

初めて使う洗剤は、衣類の目立たない部分で試すのがセオリー。

もし色柄落ちする相性のものだったら、ダメージデカいからね。

 

だから僕も、今のうちにミニマイトに試してみるよ。

強めの魔法を使ってみて、それでも効かなかいなら、僕はこの旅始まって以来最大の危機に直面することになる。敵の罠にかかったときとか戦闘の最中にそのことを知るのは最悪だから、何も起きていないこの状況で実験しておきたい。

 

動きがすばしこいから、コイツ自身にかける魔法じゃ上手くいかない気がする。

だから、僕との間に壁を作り出してみよう。

その間に見つからないほど遠くへ離れれば、何とかしのげると思う。

 

「WAL」

あらゆる飛び道具も生き物もはねつける、見えない壁が出現する。

これでミニマイトの動きを封じ込めれば、魔法効果が切れるまでの間に、僕は逃げおおせると思う。

WALは強力な呪文だからね。

 

前方の村はかなり大きくて人も多そうだから、あの中へ逃げ込めればひとまず安全じゃないかな。

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…だが、壁を出したにもかかわらず、後ずさる僕にミニマイトは平然と近づいてくる。

壁は僕の鼻先に出したはずなのに…

 

ミニマイトはクックッと笑う。

「ぼくがそばにいるあいだは、魔法をかけようったって時間のむだなのさ」

ドヤ顔でそう僕に告げた。

これが、エルフ商人が僕に教えてくれた言葉「ミニマイトと会ったら走れ」の理由だったんだな…。

 

それに、魔法をかけるのは時間よりもむしろ体力のムダだ。

WALは基本魔法のひとつで、効果こそ絶大だけど、体力の消費が激しい。

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(メタ記述)

WAL詠唱は体力ポイント4を失う。

体力ポイント:15→11

 

これは、終わったかもしれない。

一休みなんかしなければよかった。

魔法を使えない魔法使いは、使えない公務員だ。

ミニマイトがそばにいる限り、僕は任務など達成できないと思う。

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