グランドレイガー酒場を出ると、僕はジャンに文句を言った。
「おいジャン。ビリタンティの人たちは、ここがGOGO対象外になったこと知ってるんだろ? ならなぜこんな高値を付けるんだ?」
本当はグランドレイガーに聞きたかったけど、彼は怖すぎるから質問を差し控えさせていただいたんだ。
不用品と引き換えにエールを飲ませてくれたしね。
それにもしも、「お答えは差し控えさせていただきます」なんて、下向いて棒読み調で返答されたらドン引きするからね。
ジャンは悪びれもせず、僕に説明する。
「だから金貨2枚なんだよ。もしGOGO対象地区だったらこの倍の値段はするよ」
「なんだよそれ? ひどいボッタじゃないか」
ジャンが言うには、アナランドが悪いんだってさ。
質の悪い景気浮揚策はかえってデフレを誘発して経済を停滞させるっていうんだ。
たしかに、一時的に半額になった感覚が身に付くと、キャンペーンが終わったとたん、値段が倍になった気がして使わなくなるからね。
それに、物価指数に連動して年金が減ったら、いま貰ってる世代だけじゃなくて、払ってる側の僕たちの絶望感も爆上がりだからさ。
そりゃあ景気も一気に冷え込むってもんだ。
だからビリタンティでは、GOGOの対象になったら価格を倍に釣り上げるつもりでいたらしい。
たぶん、アナランドでやってる乱痴騒ぎのGOGOキャンペーンが終わったとき、反動で需要が冷え込む各地域の中、ビリタンティだけが堅調な勝ち組になるんだろうね。
なんともクレバーな村だ。
しかし、だとしたら今のこの乱痴騒ぎは一体なんだ?
通りの向こうでは、一人の少年が老婆を膝に乗せて尻をぴしゃぴしゃ叩いている。ワケがわからん。
ウザいからZAPの呪文で一撃死させてやろうとしたけど、ジャンがいることに気づいて思いとどまった。魔法は使えないんだった。
まあ、この村の乱痴騒ぎはきちんと計画された年に1度の限定的なもので、アナランドの乱痴騒ぎに比べれば上質ってことになるのかな。
もたつく足で宿屋に向かいつつ、このビリタンティでの1宿1飯の価格にヒヤヒヤしていた。
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